遺言書の書き方

自筆証書遺言の作成手順

  1. 全文を手書きで書く

    • 遺言書の内容はすべて遺言者が自分の手で書く必要があります。パソコンでの入力や他人に代筆してもらうことは認められません。
  2. 日付を書く

    • 遺言書には必ず作成した日付を記載します。日付がない場合や曖昧な日付(例:「2024年9月」など)は無効になる可能性があります。具体的な年月日(例:「2024年9月18日」)を記載するようにしましょう。
  3. 署名をする

    • 遺言書の最後に、遺言者本人の氏名を手書きで署名します。これも遺言者本人が書かなければならず、他人の代筆は無効です。
  4. 押印する

    • 署名の後に押印します。印鑑は実印が望ましいですが、認印でも法的には有効です。
  5. 財産の特定を明確にする

    • 遺産として何を誰に相続させたいかを具体的に記載します。たとえば、「名古屋市の自宅を長男に相続させる」「○○銀行の預金口座を次女に相続させる」といった具合に、財産の内容と受取人を明確にします。財産が不明確な場合、争いが生じる可能性があります。
  6. 不動産や預金についての注意

    • 不動産の場合、正確な住所や登記簿に記載されている内容を記載するようにしてください。
    • 預金の場合は、銀行名や支店名、口座番号を明記します。

追加ポイント

  • 遺言の保管

    • 自筆証書遺言は、自分で保管するか、信頼できる人に預けることができますが、2020年7月以降は「法務局の自筆証書遺言保管制度」も利用できます。法務局に預けることで遺言書の紛失や偽造のリスクを防げます。
  • 訂正方法

    • 遺言書の内容を訂正する場合、訂正箇所に二重線を引き、訂正の旨を記載した上で、訂正箇所に署名と押印が必要です。訂正方法が誤っていると、その部分は無効になります。

自筆証書遺言のサンプル

2023年5月10日

私は、以下の内容で遺言を残します。

 

名古屋市中区○○1丁目の自宅は、長男○○に相続させます。

○○銀行○○支店の普通預金口座12345678にある預金は、次女○○に相続させます。

 

遺言者 田中 太郎 印

 

これらの手順に従って作成すれば、自筆証書遺言として有効になります。ただし、内容に不備があると無効になる可能性があるため、慎重に作成することをおすすめします。

なお、2019年の法改正によって、自筆証書遺言に関するルールが一部緩和され、財産目録についてはパソコンで作成することが認められるようになりました。ただし、遺言の本文は依然として遺言者本人が手書きで書く必要があります。


新しい自筆証書遺言のルール

  1. 全文の手書きは依然として必要

    • 遺言の本文は、これまで通り遺言者が自筆で書かなければなりません。パソコンで入力してプリントアウトしたものは無効です。
  2. 財産目録はパソコンで作成可能

    • 遺言書に添付する財産目録は、パソコンで作成することが認められています。また、財産目録の一部として通帳のコピーや不動産登記簿のコピーを添付することも可能です。
    • ただし、財産目録に署名と押印は必要です。目録の各ページに必ず署名し、押印も忘れずに行います。

パソコンで財産目録を作成する場合の注意点

  • 手書きの署名と押印
    • 財産目録がパソコンで作成された場合でも、各ページに遺言者の署名と押印が必要です。
  • 財産を詳細に記載
    • 不動産の場合、登記事項証明書の情報を正確に記載することが重要です。
    • 預貯金については、金融機関名、支店名、口座番号などを具体的に記載してください。

具体例(財産目録)

本文(自筆)

2023年5月10日

私は、以下の内容で遺言を残します。

 

名古屋市中区○○1丁目の自宅は、長男○○に相続させます。

○○銀行○○支店の普通預金口座12345678にある預金は、次女○○に相続させます。

 

遺言者 田中 太郎 印

 

財産目録(パソコン作成)

【財産目録】

 

1. 不動産

名古屋市中区○○1丁目1番地、土地および建物

登記簿情報:名古屋法務局登記簿123456

 

2. 預貯金

○○銀行○○支店 普通預金 口座番号:12345678

 

遺言者 田中 太郎 印

 

このようにして、本文は手書きで書き、財産目録をパソコンで作成することで、より便利に遺言書を作成できます。


具体的な例と説明

自筆証書遺言の記入方法について、具体的な例とその説明を一緒にご案内します。以下に、遺言書の各部分をどう記載するか、例を交えながら説明します。

1. 日付の記載

例:

2023年5月10日

説明: 日付は必ず**「年月日」**まで正確に書きましょう。「令和5年5月10日」や「2023年5月10日」など、日付の形式に特に制限はありませんが、具体的な日を含めることが重要です。「2023年5月」など月や年だけを記載する場合は無効となる可能性があります。

2. 遺言の本文

例:

私は、以下の通り遺言を残します。

1. 名古屋市中区○○1丁目1番地の土地と建物を長男○○に相続させます。

2. ○○銀行○○支店の普通預金口座12345678にある預金を次女○○に相続させます。

 

説明: 遺言書の本文には、遺言者がどの財産を誰に相続させるかを具体的に記載します。この部分は手書きで書く必要があります。また、財産を特定できるように詳細に記載することが重要です。例えば、不動産は正確な住所や登記情報、預貯金は金融機関の名前や支店名、口座番号などを明記してください。

3. 署名と押印

例:

遺言者 田中 太郎 印

 

説明: 遺言書の最後には、遺言者の手書きの署名が必要です。また、署名の後に必ず押印(印鑑を押すこと)を行います。印鑑は実印が望ましいですが、認印でも法的に有効です。署名は遺言者本人が行い、代筆は認められていません。

4. 財産目録(パソコンで作成する場合)

例:

【財産目録】

 

1. 不動産

   名古屋市中区○○1丁目1番地の土地および建物

   登記簿情報:名古屋法務局登記簿123456

 

2. 預貯金

   ○○銀行○○支店 普通預金 口座番号:12345678

 

遺言者 田中 太郎 印

 

説明: 遺言書に添付する財産目録は、パソコンで作成可能です。この目録には、財産の詳細な情報を記載します。不動産の場合は登記事項証明書に基づいて正確に記載し、預貯金の場合は銀行名、支店名、口座番号を明記します。財産目録が複数ページになる場合は、各ページに署名と押印が必要です。

5. 訂正方法

例:

1. 名古屋市中区○○1丁目1番地の「自宅」を長男○○に相続させます。

             ↓訂正

「土地および建物」に変更

訂正した旨を記載し、署名と押印

遺言者 田中 太郎 印

 


遺言書全体の例

2023年5月10日

 

私は、以下の通り遺言を残します。

1. 名古屋市中区○○1丁目1番地の土地および建物を長男○○に相続させます。

2. ○○銀行○○支店の普通預金口座12345678にある預金を次女○○に相続させます。

 

【財産目録】

 

1. 不動産

   名古屋市中区○○1丁目1番地の土地および建物

   登記簿情報:名古屋法務局登記簿123456

 

2. 預貯金

   ○○銀行○○支店 普通預金 口座番号:12345678

 

遺言者 田中 太郎 印

 

このようにして、自筆証書遺言を作成すれば、法的に有効な遺言書が出来上がります。